くるたん闘病記      
2010年秋、わが家の子となって間もない幼いくるたん(くるみ)が風邪をひいてしまいました。
猛暑も一段落し9月も終わりに近づいた頃のことでした。夜少し冷え込んむようになってきたので
寒くならないようにと、くるたんの容器は毎夜私の寝床の傍に置いて寝ていました。
その容器の中から時おり小さなキューッ!という音が聞こえてくるような気がするのです。
そして、この音は徐々に頻繁になってきているように感じました。昼間、明るいときによく観察
してみると、くるたんは音を出すとき口を少し開いてパクパクしています。
このような経験をするのは初めてでしたが、これまでに本やネットで読んで頭に残っていた
ことから「もしかしたら、これが風邪の症状では?」と思いました。このときのくるたんは食欲も
いくらかありましたし動きもとても機敏。音を出すことと口を時々開くこと以外はあまり異常はなく、
ぱっと見はとても元気そうでした。しかし、亀の場合、もしも呼吸器感染症、風邪であれば
早期治療が何より肝心ですから、早いうちに抗生物質を処方してもっておかなければと思い
すぐに獣医さんへ連れて行きました。

先生に診ていただいたところ、肺に感染症を起こしているとしてもレントゲンを撮っても写らない
ほどのごく初期の軽い状態なので、抗生剤を入れるより免疫力を高め、自然治癒力で治してしまう
ほうがよいでしょう、とのこと。そして、お薬は使わずに治すことになりました。

先生からアドバイスしていただいたことは、とにかく温めること。
確かに、ウイルスに抵抗するための免疫力を高めるには、体の温度を上げることが大切ですよね。
人間は体温が1度上がると免疫力が30%アップする、と言いますが、これは亀さんにも
当てはまること。人間の場合は身体に自然と熱が出て体温を上げて病気を治そうとするシステムが
備わっていますが、変温度物である亀さんの場合は自分の身体で熱を作り出すことができませんので、
周りの水温や室温を上げることによって外側から身体を温めるしかありません。
ただ、温めなさい、と言われると、水中ヒーターを使って水温だけを上げればよいだろう、
とつい考えてしまいますが、水温だけではなく、ライトなどを使って周りの空気も一緒に温めること
がすごく大事なんだそうです。亀さんの場合は肺の容積が大きいため、水を温めて甲羅の
外側から身体を温めるよりも、吸う空気を温めて直接肺を温めるほうがずっと効果的なんだ
そうです。

長年亀を飼育していながら、これまで一度も水中ヒーターを使ったことがなかったわが家。
さっそくホームセンターへ行って、ヒーターを吟味しました。初めてのことで、どんなものを
買えばよいのやら、売り場ではしばらく悩みました。お店のスタッフに亀のためのヒーターが欲しい
と言うと亀専用のものを薦められましたが、亀用ヒーターといえば、たいていヒーターカバー
付きで25〜26℃に固定されています。もちろん使う主は亀ですから、危険防止のための
カバーはどうしても欲しいですが、今回は治療が目的ですので、さらに温度を上げたいので
20℃〜30℃まで(実際にはもう少し上げられます。)温度が変えられるサーモスタットが
セットになった熱帯魚用ヒーターを選ぶことにしました。サーモスタットをヒーターに繋いで
使う物ですので、どちらか一方が壊れても部分取替えが可能です。それと、別売りの
ヒーターカバー、そして水温計を買って帰りました。
お店の方に「ウォーターサプリ」という名前の、免疫力を高めて感染症の予防&治療する
効果があるという商品もついでに薦められましたので、これも一緒に買いました。
お水換えのたびにお水の量に応じて加えるという液体サプリメントです。

さっそくヒーターを使って水温を温め、同時に上からはライト(家にあった60Wの電球が
ついた普通の電気スタンドをホットスポット用ライトとして代用しました。)で照らして空気も
温め始めました。これで2〜3日様子を見ました。以前より悪化している様子は全くありませんし、
キューッという音を出す頻度も以前より少なくなっている気がします。が、微妙に良くなって
いるような気もするけれど、何の変化もないような・・・その程度です。
「薬を使わず、自然治癒力に任せているのだからたった2〜3日で急激によくなるなんて期待する
ほうが間違っているのかも。これが自然のスピードというものかな。」とも思いましたが、気短な私は
顕著な改善がないことに不安を感じ、待ちきれず、先生に電話をしてくるたんの様子を話し
「このままで大丈夫でしょうか?」と尋ねてみました。
先生は「もう少し様子を見てください。もし一週間経っても改善が見られないようなら、お薬を使うことに
しましょう。」とおしゃいました。

顕著な改善が見られないのは、もしかしたらウイルスに対抗するためにじゅうぶんなほど
身体が温まっていないからかも、とも考え、保温力をアップし、先生からアドバイス
していただいた”周りの空気を暖かくすること”という点をさらに強化するため、その夜からは
ケージ全体をダンボールの箱で囲ってみることにしました。ダンボール効果はじゅうぶんにあり、
くるたんの周りの空気は急にもわぁ〜と暖かくなりました。すると、症状はたった一晩で目に
見えて改善し始めました。そして、2〜3日後には全く症状が消えました。

購入したヒーターはダイアルを最高にまで回すと水温は32〜33℃くらいにまで上がります。
症状も消えたのに、ここまで高い温度の中でずっと飼育し続けるのは望ましくないのでは?
そう思ったので、少しずつ温度を下げていこうと思いました。と言っても、あまり急に温度を下げては
くるたんの身体も驚いてしまいそう。そこで、くるたんには気づかれない程度に、1日に0.5℃ずつ
つまり1度下げるのに2日にかけて、慎重に、ゆっくりゆっくり温度を下げていきました。
温度が固定された亀用のヒーターは、だいたい25〜26℃くらいに設定されているのだから
最終的にはそのくらいにしてこの冬を越させようと思いました。

そんな矢先、大変な失敗をしてしでかしてしまいました。ヒーターを使うことにまだよく慣れていなかった私。
ヒーターのコンセントを抜いたときにうっかり忘れてそのまま一夜を過ごさせてしまったのです。
容器をダンボールですっぽり包んであったことと、それほど気温の低い日ではなかったこと
がせめて幸いでしたが、ヒーターなしの所へくるたんを一晩放置してしまったのです。
箱の中からはまたキューッという小さな音が聞こえ始めてしまいました。まったく食べないわけ
ではありませんが、餌にもあまり興味を示しません。普段と比べると陸へ登っている時間が
長すぎるのも気になりました。とりあえず、また設定温度を最高値にまであげてしばらく様子
をみることにしました。すると、症状は案外簡単に、まる1日ほどで完全に消えてしまいました。
今度は念のため2〜3日最高温度を保ったままで様子をみました。症状はもうまったく出ません。
食欲も旺盛ですし、元気いっぱいです。今度こそ完治したと思ってほっとしました。
そして、その後また温度を1日に0.5℃ずつ下げていきました。しかし、なんと!2日ほど経った頃、
また口をパクパクさせながら音を出しています。餌にもまたあまり興味を示しません。
陸へもよく上がっています。何度も症状がぶり返してしまうのはどうしてでしょう。よくなったように
思えても根治はしていないようです。根治させるためには一体どうすればよいのやら。

再度、動物病院へ連れて行って先生にご相談してみました。
先生は、今は免疫力とウイルスの力関係のバランスによって、微妙によくなったり悪くなったりしている
状態なので、症状がぶり返してしまうのでしょう、とおっしゃいました。つまり、やっぱりまだ根治
はしていなかったようでした。
そして今回も先生は、やはり出来る限りお薬は使わずあくまでも温度を上げることにより治すことを
薦められ、この冬は症状が消えても温度は下げず、できれば春までずっと高い温度を保ったまま
飼育してくださいとおっしゃいました。さらに、その間は頻繁に体重測定をして順調に成長しているか
どうかもよく観察しておくようにとアドバイスしていただきました。
その後、くるたんは症状がぶり返すこともなく、餌もよく食べ、体重も順調に増え、今のところ
とても元気にすくすく育っています。
これから生まれて初めての冬を迎えようとしているくるたん。この冬は先生のアドバイスどおり
大事をとって、約30度の水温と室温の中で”箱入り亀”になって春までぬくぬくと暮らす予定です。

※ 風邪、呼吸器感染症に関しては「かめさんの健康 6」をご覧ください。

尚、今回くるみがお世話になった動物病院(フォーゲル動物病院/神戸市灘区)は、先生のご承諾を得て
HPをリンク集のほうにご紹介させていただいております。先生は亀さんのことに大変お詳しく、とても素敵な
病院です。関西方面にお住まいの方のお役に立てば幸いです。

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