2024年5月7日掲載

愛亀が高齢になったら気を付けること
(夏の暑さ)

最近では夏の暑さがどんどん厳しくなって、経験したことがないような記録的な猛暑になることも
珍しくなくなりました。
亀は外気温に依存しながら生きている生き物。気温が下がると代謝が落ちて活動が鈍るため
毎年秋になると冬越し準備を始め、ヒーターなどで対策をされる飼い主さんは多いことでしょう。

一方、夏は亀が活動的で元気になる季節というようなイメージがあって、冬の寒さ対策と比べて
暑さに対する対策の方は無頓着になっていないでしょうか。
私はある時から冬の寒さよりむしろ夏の暑さに危険を感じて警戒するようになりました。

高齢になった亀は若い頃ほど暑さへの耐性がありません。そのことを私が初めて痛感したのは
2018年の夏でした。この年、私が住む地域では6月下旬、いつもよりかなり早く梅雨が明けました。
それからしばらく経った7月中旬頃。いつもならコロコロと私の後を追い掛け回し、うるさいくらいに
付きまとってくるクサガメのくもすけ(♂、当時25歳)が、突然私に全く興味を示さなくなりました。
全く人懐っこくありません。それどころか、私に背を向け猛ダッシュで逃げて家具の隙間のような
薄暗いところに潜っていってしまい、そこから引っ張り出そうとすると「嫌だ〜!」と言わんばかりに
全力で抵抗してきます。前足で掻き分けるようにしながら、座布団の下に強引にゴリゴリと潜って
いく仕草も見られました。寒くなり始めた秋口よく目にする仕草と似ていましたので、まるで冬眠の時
みたいと思いました。

くもすけはその5年ほど前、体調不良に陥って、その時も数か月、私に全く懐かなくなっていたことが
ありましたので、最初は体調が悪いのではないかと心配しました。
しかし、この時はちょっと様子が違いました。食欲は旺盛。餌に喰いついてくる勢いの良さは
普段と何も変わりませんでしたので、体調不良以外に何か原因がありそうだと思いました。

そこで同じような経験をしている飼い主さんが他にもいるのではないかとネットで探してみました。
するとさっそくくもすけと同じ高齢のクサガメが夏に夏眠状態になったという情報に出逢いました。
その亀さんもくもすけと似た様子でしたが、餌も全く食べなくなり、秋涼しくなった頃に食欲が戻って
元気になったということでした。さらに亀は冬眠だけでなく夏眠することもある生き物だということが
わかってきました。亀を20年以上も飼っていながら「夏眠」という言葉を知ったのは初めてのことで
驚きました。

「冬眠」や「夏眠」は生き物が低温や高温、乾燥などの過酷な自然環境に適応するため代謝を
下げている状態。そう考えると、適温を越せば暑さも寒さも生き物にとっては同じように危険だ
ということです。高齢になって体力が落ちてくると適応できる環境の範囲が狭まってきますから
若い頃よりも代謝を落として対処しなければならなくなるような状況が増えくるのは当然だと
思いました。

この時のくもすけには奇妙なことがもうひとつありました。昼間は水の中にすっぽり身を沈めて
静かにしているのに、毎日決まって夕方頃になると急に元気になるのです。
そのまま真夜中になっても真っ暗ななかバチャバチャと水音を立てて大はしゃぎして、夜明けごろに
なると徐々にまた静かになります。そんな日がずっと続きました。
昼夜が完全に逆転して、まるで夜行性になったようでした。これには最初かなり戸惑いましたが、
これに関しても、高温になる熱帯地域で亀は夜行性になることがあるという事を知って
なるほど、と思いました。くもすけが昼間じっとしていて、夜になると目を覚まして活動していたのも
きっと暑さから身を守るための手段だったのでしょう。

それ以来、部屋の気温が30度を超えるような猛暑の日にはエアコンの設定温度を28度にして
くもすけを水槽ごと冷房の効いた部屋に入れるようにしています。
ただ、亀は人間のように自分で体温を作り出せませんので適温と感じる温度が人間とは違うこと
は忘れてはいけません。例えば湿度が高くて蒸し暑くなる梅雨時などに飼い主の感覚だけで
冷房の効いた部屋に入れてしまうと、亀にとっては寒すぎて食欲が落ちてしまうこともあります。
そのようなことを心配して、それまでは亀を冷房が効いた部屋に入れることは避けていた私でしたが
上に書いたようなことを経験してからは少し考えが変わりました。
実際、水槽を気温が32〜33度になっている部屋から冷房した部屋に移動すると、それまで
水中にすっぽり沈んでじっとしていたくもすけが急に元気に動き始めて、生き返ったように
なります。猛暑と言われるほどの暑さになると亀もやっぱり辛くて、飼い主と同じように夏バテ
してしまいそうになるみたいです。

ここまで「愛亀が高齢になったら気を付けること」としてお話してきましたが、暑さ対策は年老いた
亀に限った事ではなく飼育下にあるすべての亀に必要です。
水棲亀を飼う時に心得ておいたほうがよいポイント。それは、ペット亀が暮らしている環境と
野生の亀が暮らしている環境は違うということです。真夏の炎天下、水辺の陸に登って長時間
直射日光を浴びながら甲羅干しをしている野生亀の姿を目にして、亀は暑さに強くて真夏の
強い光を浴び続けてもきっと平気なんだろうと思うかもしれません。
しかし、池や川と水槽では水の量が全く違います。水量が多い池、流れのある川では
気温が高くなっても水温は気温ほどは高くはなりません。深い所に潜ればより水温は低いので
野生の亀は暑いと感じたら水中に飛び込んで自分が快適だと感じる所まで移動して、自力で
暑さをしのぐことができます
。つまり野生の亀たちには環境を選ぶ自由があります。
しかし、水槽の中にいては、水量が少なくて水温が外気温とほぼ変わらないにもかかわらず
どんなに暑くて辛くても亀はその場所で我慢しているしかないのです。
そのため、飼い主がこまめに水温を管理しながら愛亀たち快適に過ごせる環境を作ってやることが
必須です。

夏の飼育では以下のようなことに気を付けるとよいと思います。

・ 屋外で飼育している場合、ケージは直射日光が当たらない所、風通しのよい所に置く。
 (日陰でもじゅうぶんな紫外線量がありますので、直射日光を当てる必要はありません。)
・ どうしても日が当たってしまう場所に置かなければならない時は日光を遮るため日除けをする。
・ 屋内に亀を置いて外出するときも要注意。水槽は日が当たらない所、家じゅうで最も涼しそうな所
  できるだけ風通しの良い所に 置いて出掛ける。
・ 水はできるだけ多めに入れておく。
など。

今年ももうすぐ暑い夏がやってきます。
暑さで愛亀さん達が辛い思いをしないよう気を付けながら、元気に夏を過ごさせてあげましょう。
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