2024年4月3日掲載

愛亀が高齢になったら気を付けること
餌について(タンパク質の摂取量)

飼育仲間のくろよんさまが成体の亀、特に高齢の亀を飼育する時に見落としがちな餌に関する情報を
シェアしてくださいました


,くろよんさんが愛亀やんちゃん(クサガメ♂、当時20歳くらい)の動きが鈍いことが心配になって
かかりつけの動物病院へ連れて行かれたのは2019年の春頃のことでした。
血液検査の結果、やんちゃんは尿酸値が高くなっており、脱水症状を示す数値も高く、
消化管の動きも悪くなっており「慢性腎臓病」ということでしたが、それ以上詳しいことや
原因は何もわかっていませんでした。
そして原因が不明なまま、定期的に検査しながら試行錯誤の治療が始まりました。
尿酸値を改善するお薬は肝臓に負担が掛かってしまうという理由から、お薬を使わない方法で
治療を進めることになりました。

脱水状態、胃腸の不調など、症状を改善するために点滴((注射器による輸液の注入)を
しながらの治療は何年も続きました。病院での治療だけではありませんでした。
病院から輸液と注射針、シリンジをもらってくろよんさんはご自宅でも辛い点滴を根気よく
続けられました。点滴は当初3日1回のペースでしたが、そのうち2日に1回となり
それが何年も続きました。,治療はやんちゃんの症状を確実に改善してくれましたが
やめると数値が悪化してしまい一喜一憂の繰り返しでした。良い状態は安定しませんでした。
検査は調子が良い時は2か月に一度、調子が悪くなると一か月の一度のペースでしたが、
夏に悪くなる傾向がありました。

くろよんさんのお宅ではやがて同じクサガメのガメコちゃん(2024年4月現在17歳半)にも
同じく慢性腎臓病の症状が現れるようになり、2日の1回点滴をするようになっていました。

やんちゃんが治療を始めて5年近くの年月が経ちました。2024年1月、やんちゃんの数値は
高止まりしたままで数値を下げるには点滴の回数を増やすしかないという状態でした。
そんな折にかかりつけ病院の院長先生からある提案がありました。
点滴の回数を増やす代わりに餌をヌマガメ用からリクガメ用に変えて、摂取するタンパク質量を
減らしてみてはどうか、というご提案でした。

市販されている水棲亀の餌というのは、年齢や病態に応じてバラエティに富んだ商品が揃う
ドッグフードやキャットフードとは違って、タンパク質の含有量が高い商品しかないそうですが
同じ亀の餌でも、植物食のリクガメ用の餌は材料に植物性のものが多く使われていて
タンパク質の配合量がヌマガメ餌に比べるとぐグンと少ないんだそうです。

先生はさっそく病院で飼育しているリクガメさんの餌を少しわけてくださったそうで
それをやんちゃんとガメコちゃんに与え始めてみたところ、なんと、やんちゃんは血液検査の
血中尿素、窒素値が初めて正常値となり、ガメコちゃんも最高時の30%に落ち着いて
これまであったアンモニア臭もほとんどなくなったそうです。
さらに、その2か月後の血液検査では2匹ともに数値は基準値にまで下がりました。

餌を変えてどのように改善したかがわかるように、検査結果の数値を公表してくださっています。
ガメコちゃんは尿酸値はもともと基準値内だったため血液濃度、血中尿素量、総蛋白量
のみ記載しています。2024年1月15日以降の紫色で表示している箇所がリクガメ餌に
変えた後の数値です。

やんちゃんの検査結果
検査日 2019.6.10 2020.6.23 2021.6.18 2022.7.28 2022.9.29 2022.10.28 2022.12.2 基準値
血液濃度(%) 41 37 34 34 34 34 34 25〜33
BUN 血中尿素量(mg/dl) 23.7 63.1 96.9 51.0 105.3 76.5 75.4 17.6〜22
尿酸マイクロg/dl) 8.6 3.3 2.7 2.8 5.6 2.4 3.3 0.5〜1.9
総蛋白量(g/dl) 8.9 8.4 7.4 7.2 8.2 7.0 7.0 3.4〜5.6

検査日 2023.1.13 2023.2.14 2023.3.17 2023.4.13 2023.5.18 2023.7.7 2023.9.5 基準値
血液濃度(%) 34 36 38 40 37 32 32 25〜33
BUN 血中尿素量(mg/dl) 47.7 41.3 36.4 41.2 32.2 50.7 93.9 17.6〜22
尿酸(マイクロg/dl) 2.3 3.6 2.3 4.5 2.1 2.6 2.9 0.5〜1.9
総蛋白量(g/dl) 7.0 7.2 7.8 8.0 7.4 7.0 7.4 3.4〜5.6

検査日 2023.10.10 2023.11.9 2024.1.15 2024.3.22 基準値
血液濃度(%) 36 39 38 35 25〜33
BUN 血中尿素量(mg/dl) 98.5 79.0 18.9 15.2 17.6〜22
尿酸マイクロg/dl) 2.8 2.8 2.4 2.6 0.5〜1.9
総蛋白量(g/dl) 7.6 7.4 6.0 7.0 3.4〜5.6

ガメコちゃんの検査結果
検査日 2023.3.9 2023.3.24 2023.4.13 2023.5 18 2023.7.7 2023.9.5 2023.10.10 基準値
血液濃度(%) 35 31 33 29 29 29 25〜33
BUN 血中尿素量(mg/dl) 87.0 78.2 67.6 64.1 61.6 77.9 99.6 17.6〜22
総蛋白量(g/dl) 6.0 5.8 4.8 5.6 5.6 5.2 5.4 3.4〜5.6

検査日 2023.11.9 2024.1.15 2024.3.22 基準値
血液濃度(%) 31 32 28 25〜33
BUN 血中尿素量(mg/dl) 70.3 35.8 28.8 17.6〜22
総蛋白量(g/dl) 6.0 6.2 6.2 3.4〜5.6

これを見るとリクガメ用の餌に変えた後、やんちゃんもガメコちゃんも共に血中尿素量がガクンと
落ちているのが一目瞭然でわかります。
2匹とも根治に至るのは難しいため今後も点滴による治療は続くそうですが、リクガメ用餌に
変えたことでどちらも良い状態が安定するようになりました。

尿酸も尿素、窒素、そしてアンモニア臭も、どれもタンパク質由来ということを考えると
摂取するタンパクの量を減らすと数値が下がって症状が改善するという現象は当たり前の
ことと思えますが、じゅうぶんな栄養が摂れているだろうかということにばかり気を取られていると
その栄養がかえって過剰になって身体に負担が掛かかっていることにはなかなか
気づくころができません。とても見逃しやすく盲点になりやすい点だと思います。

私たち飼い主は、愛亀が食欲旺盛でたくさん食べてくれていたら安心して喜んでいますが
「腹八分目医者いらず」というのは亀も同じです。
特に高齢になれば栄養もカロリーも飼い主が考えているほど多く必要ないのでしょう。
そういえばうちのくもすけ(クサガメ♂ 31歳)も若い頃と比べると食べる量は減っていて
特に冬はいつもよりたくさん食べると決まって翌日はあまり餌に関心を示さないので餌を抜きます。
それでも毎日元気に過ごしています。

やんちゃんは当初、リクガメ用の餌をあまり好まなかったそうで、2匹とも徐々に慣れて食べて
くれるようになったとのことでしたが、亀にはそれぞれ食の好みもありますから
新しい餌に馴染んでくれないこともあると思います。
食べ慣れた餌しかどうしても食べない時は無理せずいつもの餌の量や回数を加減するだけ
でもいいと思います。「亀の餌」から「鯉の餌」に変えることでもカロリーは抑えられると思います。

市販されている水棲亀用餌にタンパク質が多く含まれているというのはおそらくタンパク質を
より多く必要とする成長期の亀を対象に作られているからではないかと思います。
ペットとして飼育されている水棲亀はほとんどが2〜3歳くらいまでの幼い亀で、10年以上
生きる亀はごくわずかだそうですから。
ヌマガメの餌には犬や猫のように年齢や体調など、条件によって細分化された餌が販売されて
いないといということを知って、飼育下では年齢や状態など個々の状態に合わせて餌を微調整
することも飼い主の役目です。

成体の亀を飼育中の飼い主さん達のお役に立つのであればと情報をシェアしてくださった
くろよんさんと愛亀のやんちゃん&ガメコちゃん、ほんとうにありがとうございました。
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