かめさんと一緒に海外へ(フランス編)
                                      (2010年10月28日掲載)

この度ご主人の海外赴任にのため1年半の間、フランスのニースへ渡航されることになったAkikoさま。
当初は3匹の愛亀ちゃん(クサガメさん2匹とアカミミさん1匹)を連れて渡航されるご予定でしたが、
事情により、最終的には亀さん連れでの渡航は断念せざるを得なくなってしまいました。
亀ちゃんたちは日本でお留守番していることになってしまいましたが、これまでゲストブックへの
書き込みとメールにてAkikoさまからご提供いたただきました情報や体験談は、大変貴重なもので
今後末長くみなさまにも参考にしていただけることと思いますので、順を追ってこちらに記録させて
いただきたいと思います。
「かめさんと一緒に海外から帰国」編では海外でペットとして亀さんを飼育しておられる方が愛亀ちゃんと一緒に
日本に帰国するための情報をお伝えしましたが、こちらは海外赴任などで海外へのお引越しをされる方の
ための情報(フランス編)です。帰国編と合わせて参考ににしていただけたら幸いです。
今回大変詳しい情報をご提供くださり、ご協力くださったAkikoさまと3匹の亀さんたち(織田信長ちゃん、
紫式部ちゃん、亀左ヱ門ちゃん)ほんとうにありがとうございました。

亀さんを連れてフランスへ渡航するためAkikoさまがご自身で事前に調査し、確認されたこと
@ フランスの亀さんの入国(輸入)情報を得るため、在日本フランス大使館に問い合わせて
   フランスへの亀の持ち込みに関しては渡航日前10日以内の獣医さんの診察による健康証明書
   (英文フォーマット、英文で記入)を取り寄せることにより、 亀は5匹まで持ち込めるということを確認。

A 日本に帰国する時のため、厚生労働省、農林水産省へ問い合わせて
  日本においてはカメの持ち込みに関する規制はなし(輸入の場合は条約にある種類などは規制あり)、
  ということを確認。
    ※ こちらに関するお問い合わせは下記まで    
      農林水産省・動物検疫所(動植物の検疫を管轄している検疫所です。)
      厚生労働省・検疫所(人体、食品の検疫を管轄している検疫所です。)

B フランスまで亀さんのを運ぶ手段の情報を得るため、ANAに問い合わせて
  成田〜パリまではANAでペット扱いとして搭乗させることができることを確認。
   ※ 今回Akikoさまが亀さんたちを成田からパリまでつれて行くためご利用になる予定のサービスは、
     「亀さんと一緒に海外から帰国」のページでご紹介しております
     全日空のペット連れで旅をする人のためのサービスです。

上記、ご自分で事前に調査された3つの内容は、ビザ発行の準備や渡航手続き、引っ越しなどをサポートする
専門会社とのやりとりの中でも、亀さんを一緒に連れて行きたいためANAを利用したいということ、亀さんたち
の情報(体長、重量など)を要望として通知した上で、サポート会社の方からも改めて確認していただいた
そうです。

尚、この3点は、フランスにかかわらずどこの国へ行く場合にも、必ず確認しておかなければならない大切な
ポイントです。

フランス国内での移動
ANAのサービスを利用することによりパリまで亀さんを連れて行き、フランスへ無事入国させるところまでは
問題がないことがご確認できたものの、フランスの国内便ではどの航空会社でもイヌ、ネコ以外の動物を
搭乗させることはできないことが判明とのこと。パリから滞在先のニースまでの1000km以上の移動に
空路を利用する手段が残念ながら断たれてしまいましたが、陸路のTGV(フランスの新幹線)なら
亀も乗ることもできるとのこと。5時間30分という長旅となりますが、これでめでたく3匹一緒に無事ニースまで
行けることになりました。
TGVには持ち込むためのケージの規格(45cm×35cm×25cmなど指定はありますが、人間が乗る料金に
追加して5.1ユーロを支払えばよいそうです。さらに、TGVへの乗車中、亀さんたちを貨物席のような特別の
場所ではなく飼い主の手元に一緒に置いて置けるのかどうかについてご確認をされたところ、
「TGVでの自席に持ち込むことは可能。ただし対応する人によって認識が異なる可能性が大いにあるため、
貨物室に預けるようにといわれる場合もある。」との返信があったそうです。さらに、3匹以上の場合は
人間一人分の料金を追加される場合もあるとのこと。明確な基準がなく、その時々で対応が異なる
アバウトさはいかにも外国らしいですし、最後まで不安が残ります。
実際のところは大きな動物、あるいは危険な動物と判断されない限り大丈夫ではないかなという気はしますが
さてどうでしょう。

中国産のクサガメがワシントン条約の危惧種に!!!
ようやくニースまでの道のりがついた、カメちゃんたちでしたが、ここで新たな問題が浮上しました。
ケージのことやフランスでの亀さんの飼育情報を得るため問い合わせをしておられた
ある爬虫類を専門に扱うショップで「クサガメもワシントン条約V種に指定されていますしね。」とのお言葉
に驚いたAkikoさん。さっそく経済産業省に問い合わせてご確認されたところ、やはりクサガメの中でも
「中国産」は危惧主として条約に乗っていることが判明したそうです。
まんがいち疑われてしまったら、帰国の際に日本への入国ができなくなってしまうかも、という心配が。
中国産ではないことを証明するには、原産地を証明しなければなりません。

原産地を証明するには
クサガメの原産地は日本、中国、台湾、朝鮮半島なんだそうで、最近はカメの購入時にお店で
「原産地証明書」を発行してもらえるそうですが、証明書のないAKikoさんのお宅の亀ちゃん達は
どこ産のクサガメちゃん達なのかわかりません。爬虫類を専門としておられる獣医さんに相談をしても
「DNA鑑定をするにせよ、中国産のDNAサンプルすらあるかどうかわからないし、カメのDNA検査などと
いうものも聞いたことはない。」とのことで、中国産でないことを証明することは不可能に近いと言われて
しまったそうです。
経済産業省の方からは、原産地を証明するために、貿易事業を行う業者さんに対して原産地証明を
発行する役割を担っている機関・商工会議所の方へ相談してみてみられては?とのご提案も
あったそうですが、こちらはあくまでも事業主を対象としたものであり、個人に対しては適応できない
とのこと。

商工会議所のほうからは、「宣誓供述書」というものを自分で作成し、それを公証役場からの証印をもらって
公文書にするという方法をアドバイスされたそうです。この文書は原産地証明書の代わりにはなりませんが
日本とフランスが共に加盟国となっているハーグ条約というものがあるため、公証役場で作成された書類は
外務省発行のものと同じレベルの公文書として扱われるとのこと。つまり、本来はいくつもの手順が必要な
外務省発行の書類をショートカットして作成できる方法だそうで、「アポスティーユ証明」と呼ぶそうです。
このアポスティーユ証明が今回のAkikoさんの亀さんたちの渡航にも適応され、発行されるのかどうかを
公証役場に問い合わせてみられたところ、対応可能ですとのことだったそうで、文書作成(つまり証印を
もらう)費用は11、500円とういうこともわかったそうです。つまりこれは保険料みたいなもの。
文書は、「宣誓書」というタイトルで、クサガメの画像、サイズ、生態などを飼料としてまとめ、和文焚書を自分で作成
さらにそれらを英訳して清書。それに公証人の前でサインし、さらに公証人がサインしたうえで証印、という手順で
作成し、公証役場のほうでアポスティーユ証明であるという書類を挟んで、一式となるそうです。
これらの書類と共に、クサガメ、ミドリガメなど、連れてゆく亀さんの生態に関する資料も持参しておくとより
安心かもしれません。

クサガメがワシントン条約に関わっていることは「かめさんと一緒に海外から帰国」編にも登場してくれている
クサガメのフレッド君が2年前にアメリカからやってきたときに、やはり飼い主さんが心配しておられ
税関に問い合わせてみたところ、そのときには「クサガメは大丈夫ですよ。どうぞご自由にお持ち込み
ください。」というお返事をいたただいたのですが、 それにしても、中国産クサガメではないということを証明するのは
なんて大変なのでしょう〜!

<参考>クサガメの学術名はChinemys reevesiiとされていますが、正式にはMauremys reevesiiと
        表記されるそうです。ちなみに、アカミミガメの学名はTrachemys scripta elegansです。

水質の違い
お水は地域によってその質が違います。日本では温泉地や石灰質の山付近の地域など一部の地域を除いて
カルシウムやマグネシウムなどのミネラル含有量の少ない軟質が使われていますが、Akikoさまと亀ちゃん達
が渡航される予定だったフランスなどヨーロッパやアメリカなどではミネラル分の多い硬水が使われている地域
がほとんどです。
海外へ行き、急に慣れないお水を飲んで水あたりを起こすということはよくあることですが、お水の中で暮らすヌマガメに
とってはお水は生活環境そのものですから、お水の種類の違い与える影響も人間以上に大きく、ストレスとなる
可能性があります。そんな水質の変化を心配されたAkikoさまは
その点についても爬虫類専門の獣医さんに問い合わせ
てみられたそうです。
先生のお話では「ミドリガメやクサガメなら硬水でも飼えますよ。結石も9割起きないでしょう。」とことだったそうですが
万が一の肌荒れのための薬を持参するにも、国が変わると薬事法の問題もあるため、
「日本にいるうちに※コントレックス
などの硬水を飼育水に混ぜながら、徐々に硬水の割合を高めて馴らしていくのがいいのではないでしょうか?」
とのアドバイスをくださったそうです。亀さんにはちょっとかわいそうですが、亀さんを海外へ連れ出す場合には
出発までお水の訓練もしておいたほうがよいかもしれません。
※ コントレックスとはフランスのコントレックス村でとれる湧き水(ミネラルウォーター)で、きわめて硬度の高いお水です。
  日本でも販売されています。


<日本に関して
ワシントン条約に記載があるペットを輸出入(持ち出し&持ち込み)するには
経済産業省に問い合わせた際、ワシントン条約に記載のある種類の動物を、日本から輸出、あるいは輸入できる
「ペットの特例」という唯一の手段があることがわかったそうです。こちらは成田税関で申請するそうです。
日本から出国する人がワシントン条約に該当するペット(携帯品として認められるもの)を携帯して持ち出す場合う
出国カウンターに用意してある「外国製品(ペット)の持ち出し届」を作成して、チェックイン前に税関の方を呼び出して
申告するそうです。尚、税関で確認してもらった「外国製品(ペット)の持ち出し届け」は
入国の際に、日本から
持ち出した物であるということの確認のため必要になりますので必ず受領して帰国まで大切に保管しておいてください、
とのことだそうです。申請の際には事前に、亀さんたちの写真、甲長、体重、種類がわかるようなものも持参しておくと
よいかもしれません。
この届出は、ワシントン条約リストにあるペットを例外的に日本からの出国(輸出)、日本への入国(輸入)するための
ものですが、「ペットの特例」という名称の規定が実際にあるわけではありません。海外へのお引越しなどの場合に
適応される免除規定のようなものがあると考えるとよいでしょう。つまり、転居による理由でペットを同伴させる場合に
おいては、たとえワシントン条約に記載のある生き物であっても例外的に輸出入の禁止は免除され、海外への
持ち出し&海外からの持ち込みが可能になるということのようです。

EU諸国に関して>
フランスにおけるワシントン条約に記載のある動物を輸入するための情報
これで、無事日本を出国し、帰国することができることはわかりましたが、完全に安心して渡航するためにはフランス
側でのワシントン条約に記載のある動物を持ち込み&持ち出すための方法も知らなければなりません。
しかし、海外渡航をサポートする会社に手助けをお願いしても残念ながら望むような適切な回答が得られず
情報収集が難航しまったAkikoさんでした。そして、在日本フランス大使館に問い合わせたことで、
パリにある「ワシントン条約事務所という所へ連絡をして事前に「輸出入許可証明書」を発行してもらうことにより
フランス側でも、ワシントン条約に記載のある動物を持ち込み&持ち出しは可能になることがわかりました。

これで、たとえクサガメの信長ちゃん&亀左ヱ門ちゃんが中国生まれのクサガメさんであったとしても
上に書いたような面倒な原産地証明などを作成することもなく、フランスへ渡航しその後無事日本へ帰って来れる
めどが立ったように思ったのですが・・・・
下記、アカミミガメのことで問い合わせをしたフランス税関からの回答によれば、クサガメはワシントン条約でV類に
属しているため、原産地証明書のなければ輸入は不可とのこと。一方フランスの環境省のほうからは、手続きを
踏めば日本におけるのと同様に「外国製品の持ち出し届け」のような書類を作成すれば渡航できる可能性がある、
というような回答があったそう
です。つまり、クサガメに関する回答に関しては、税関と環境省で異なっていたそうです。


EU諸国域に於けるミシシッピアカミミガメの入国規制
ワシントン条約V類に属すクサガメのことで頭を悩ませていたAkikoさんでしたが、いろいろ調べているうちに
実際のところ、EU諸国に於いては懸念していたクサガメのことよりもミシシッピアカミミガメに関する規制のほうが
厳しい、ということを知ることとなりました

日本に於いてもミシシッピアカミミガメは外来生物法で要注意リストに記載されていますが、今のところ出入国
に関する規制はありません。しかし、ヨーロッパに於いてはEU規定というものがあり、ミシシッピアカミミガメは
その中のランクBに属していることから輸入が不可なんだそうで、そのような回答がフランス税関、環境省双方
から届いたそうです。

3匹の亀さん達とのご渡航を断念
何ヶ月もの間、ご苦労をされて色々調べていらしたにも関わらず、ここへ来てミシシッピアカミミガメの式部ちゃん
を一緒に連れていけないということが判明したAkikokoさん。アカミミの式部ちゃんはクサガメの信長君とずっと
夫婦として飼育し続けておられたため、連れて行くのであれば3匹お揃いで連れて行きたいというのがご希望で
アカミミの式部ちゃんだけを日本に残し、を夫婦を別々にしてクサガメちゃん2匹だけをフランスに連れて行く
ということはAkikoさんにとって非常にお辛い選択です。
そのため、最終的には3匹の亀ちゃん達はご実家に預けて渡航されるというご決心をなさいました。
Akikoさんご夫婦のフランスご滞在中ご渡航中、3匹の亀ちゃん達が立派にお留守番していてくれ、
Akikoさん達がフランスで安心して暮らすことができますように、お祈りしています。

Akikoさんのブログ:「ささのにっき。」
こちらのブログの「カメ」というカテゴリー内にもフランス渡航に関する情報が紹介されています。
ご参考に!
 
(尚、こちらの情報は2010年現在のものです。情報は変わる可能性もありますので、必ず渡航先の国の大使館など
 関係機関に問い合わてその時点での最新事情をご確認ください。)

注意: 亀さんを外国に持ち込めるかどうか、またその場合の条件は行き先の国の法律によってそれぞれ
     違います。特にアカミミガメは輸入が禁止されているような国もたくさんあります。禁止されている
     亀さんを持ち込もうとすると没収されてしまいます。どうしても海外へ亀さんを連れて行かなければ
     ならない場合には必ず、在日大使館、行き先の国にある日本大使館、あるいは行き先の国の税関
     などその国の亀の輸入に携わる機関などに連絡を取って、じゅうぶんにご確認ください。
     少しでも不安が残る場合は連れて行くのはやめるほうが無難です。
     また帰国の際のことも考えて、行き先の国の情報だけではなく、日本における亀の入国(輸入)に
     関する最新情報も必ずチェックしておきましょう。情報は時とともに変る可能性がありますので
     必ず最新のものを手に入れるようにしてくださいね。
                                              2010年10月27日
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