<レントゲンに映らない卵詰まり(卵胞うっ滞) 
                                                  
(2015年1月29日更新)

卵詰まりを心配して、レントゲン検査で卵の有無を確認することは多いと思います.。
そして、もし卵が映らなけれえば「卵は持っていない」と認識するかもしれません。
ところが、レントゲンでは見つけられない卵詰まりがあるようです。実際には、多くの亀さん達が
経験しているかもしれないにもかかわらず、 亀の飼育は情報も乏しく、知識のある獣医さんも
少ないため、見逃されがちな「隠れ卵詰まり」です。その兆候に早く気付き適切に対処するためには
飼い主自身が知識を持っておくことも必要です。
そこで、”かめかめゲストブック”&掲示板で長年お世話になっている飼育のお仲間・くろよん様から
掲示板へのご投稿によって提供いただきました愛亀・オスカルちゃんの闘病体験を
みなさんのお役に立てていただきやすいように、改めてここにまとめさせていただきました。

オスカルちゃんの闘病体験 
いつもはホリホリを開始すると3〜4日のうちには卵を産んでいたという安産型のオスカルちゃん。
ところが、この時は開始したり休んだり・・・と断続的ではあるものの2か月以上もの間、
産卵前のような仕草が続いていたそうです。かかりつけの動物病院ではレントゲン検査も受け、
卵は映らなかったのに、その後もオスカルちゃんのホリホリは相変わらず続いたそうです。
そして、やがて食欲も落ちて便通も悪くなり、ホリホリにもだんだん力が入らなくなってきたように
思えたとのことです。明らかにいつもの産卵時とは違うオスカルちゃんのそんな様子に
「何かおかしい!」と感じられた飼い主のくろよん様は、ネットで調べて、レントゲンには映らない
卵詰まりがあることを知ったそうです。
そして、さっそく亀の手術をしてくれる病院を検索して探し、オスカルちゃんを連れて行かれました。
診断された病名は「卵胞うっ滞」。これは卵殻のない卵の元がたくさん詰まってしまっている状態で
決して珍しくはない、オスガメとの接触がない雌ガメにほんとうによくある病気なんだそうです。
このときのオルカルちゃんは、溜まった卵が消化管を圧迫してしまっている状態で
エコーで足の付け根の部分を確認するとたくさんの卵が確認されたそうです。卵胞は卵殻がない卵
なので超音波ではすぐに判明できても、レントゲンには映らないようです。
その後、オスカルちゃんは肺まで圧迫されていないかを確認するためレントゲン検査も受けましたが、
幸いにもそちらは大丈夫で、血液検査でも内臓の機能にほぼ問題がないことがわかったそうです。
ただ
、内科的に除去することはほぼ不可能なため、そのまま入院し、その5日後に外科手術をして
除去することになりました。
手術は無事成功。手術前のCT画像では消化管のスペースの半分もを占めていた卵胞は、
摘出すると両手いっぱいほどのすごい量あったそうです。オスカルちゃんもそれほどたくさんの卵が
お腹に詰まっていたのでは苦しかったでしょうね。
手術で卵を取り除いてもらってスッキリしたオスカルちゃんは、麻酔からも順調に覚め、3日後には
術前には全く食べなかったというご飯も食べるようになり、術後11日目にはめでたく退院することが
できました。

飼い主のくろよん様も「放っていたら少しずつ弱って死んでしまったかもしれないと思うと、よい先生の
ところへ早く連れて行くことができて本当によかったです。」とおっしゃっていますが
いつもとは様子が違うことに早く気づいてあげられたことでオスカルちゃんの命を救うことができました。

                                  (以上 2014年11月11日掲載)

アンドレちゃん闘病体験
さらに、オスカルちゃんが元気になって約一ヶ月。飼い主のくろよんさまから、今度は姉妹のアンドレちゃんが
餌を食べなくなりそわそわし始めたので病院を受診しました、とのお知らせをいただきました。
エコー検査の結果、卵胞はなく、レントゲンで7個の卵が確認され、少し肺を圧迫しているとのこと。
実はアンドレちゃん、この2〜3年まったく産卵をしていなかったんだそうです。
この日、病院ではカルシウムとビタミン注射と排卵誘発剤を注射してもらい、おそらく一両日中じゅうくらい
には産卵があるので、7個すべての卵を産卵したかどうか、確認して連絡するようにとのことでお家へ帰られ
ました。卵はその後すぐに無事全部産卵し、あとは食欲が戻れば大丈夫ということでしたが、
食欲はその後3日ほど経っても戻りませんでした。そして再度受診したところ、卵はないけれど、卵胞が
あるとの診断でした。異常な大きさではなかったため、点滴と強制給餌をしてもらい、翌週まで様子見
ということになったそうです。
そして約一週間後、再受診したところ卵巣が腫れているとのこと。餌も一切食べていなかったため
オスカルちゃん同様に手術を受けることが決まりました。
まるで双子のようなアンドレちゃんとオスカルちゃん。オスカルちゃんが手術を受けてから2か月後に
アンドレちゃんも同じ手術を受けることになるなんて、よほどの仲良し姉妹ですね。
ちなみに、オスカル&アンドレちゃんが受けたのは、卵管などをすべて摘出する「カメの避妊手術」
なるもので、一度なるとくせになりやすい卵胞うっ滞を完治させる手術だそうです。
手術は、年末の慌ただしい時期だったにもかかわらず先生のご厚意ですぐに受けることができ、無事成功。
術後のアンドレちゃんはすぐに歩き、傷もすっかり治り、お正月明けには退院の予定となりました。
ところが、退院予定のお正月明けになっても食欲が戻らないとのことで、楽しみにしていた退院はしばらく
お預けに。姉妹のオスカルちゃんとは違って、デリケートで優しい性格のアンドレちゃんには手術や治療、
入院による環境変化が大きなストレスだったようで、心を硬く閉ざし術後の食欲がなかなか戻らなかったようです。
幸いにも病院では、そんな性格の違いまで配慮した治療がしてもらえ退院のめども立ち、ようやくおうちに
帰ることができたのは入院してから一ヶ月後のことでした。
長い間、ほんとうによくがんばりましたね。アンドレちゃん、そして飼い主のくろよんさま、お疲れ様でした。


このような話を聞くと、雌亀を飼育している飼い主さん達は怖くなって、今まで以上に卵詰まりのことが
心配になってしまうことがあるかもしれません。
産卵活動らしきしぐさを始めたのになかなか卵を産まないと、卵詰まりのことが頭をよぎり心配になります。
しかし、産卵活動が1〜2ヶ月続くことはよくあることです。亀さんの顔をよく見て、元気がなかったり、
辛そうにしているというようなことがなければ、もうちょっと気持ちを大きく持って、もうしばらく見守って
みてあげてくだい。何も問題がなければ、多少時間はかかっても、期が熟せば自然に産卵してくれます。
ホルモンの関係で卵を持っていないにもかかわらず産卵前と同じような仕草をすることもあるようです。
また、亀は卵をかなり長く持っていることもでき、その間にできた卵胞が身体に自然に吸収されてなくなってしまう
というようなこともあるそうですから、愛亀ちゃんの元気な時とそうでないときの顔を見分けられるよう
普段からよく観察し、冷静、適切に判断する目を養い、心配しすぎることがないようにしてくださいね。

尚、万が一卵詰まりを起こして病院へ行った場合も、 オスカルちゃんやアンドレちゃんのように手術が必要に
なることは滅多にありません。手術を行うのは、先生が手術以外に治療法がないとご判断された場合だけで、
産卵を促すお薬を注射して様子を見ながら治療するのが一般的です。
亀の手術をする高度な技術を持っておられる先生は少ないですし、手術には大きな危険が伴います。
亀にも大きな負担を与えます。くれぐれも安易に手術で卵を取り出せばよいとは考えないでくださいね。

闘病体験を分かち合ってくださったくろよん様、そして愛亀のオスカル&アンドレちゃん姉妹、
ほんとうにありがとうございました。辛い経験がたくさんの飼い主さんや亀さん達のために生かされ
ますように!

          ご協力してくれたオスカル&アンドレちゃん姉妹のプロフィール


 オスカルちゃん (写真上段)
 カメの種類&性別:クサガメの女の子
 年齢: おそらく15歳くらい (2014年11月現在)
       正確な年齢は不明
 体重: 1.4s
 甲長: 20cm

 気が小さくて怖がりだけど、以前一緒に暮らしていた
 相棒のアンドレちゃんをケガさせてしまったこともある
 という暴れん坊さん。アンドレちゃんとは実の姉妹で、
 姉妹のお名前はご主人が当時ケーブルテレビで放映中
 だった”べルばら” にちなんで付けられたそうです。


アンドレちゃん (写真中段)
   カメの種類&性別:クサガメの女の子
   体重: 1.5s
   甲長: 21cm



 オスカルちゃんとアンドレちゃんは実の姉妹で
 姉妹のお名前はご主人が当時ケーブルテレビで
 放映中 だった”べルばら” にちなんで付けられた
 そうです。
 現在、くろよん家ではオスカル&アンドレちゃんを
 含めちゃん5匹の亀さんを飼育しておられます。
 そのうち、オスカルちゃんを含め、4匹は
 亡きお父様から譲り受けられた亀さんだそうです。


 
写真下段: 仲良く寄り添っって日光浴中の
         オスカル(右)&アンドレ(左)ちゃん姉妹
 
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