産卵活動時に役立つアイディア@

                                           
(2006年10月23日掲載

マンションなど土のない環境で飼育している亀さんの産卵は特に煩わしくて、そんな煩わしさとどうお付き合い
して乗り越えてゆくかは飼育の大きな課題になりますよね。
そこで、みなさまにそれぞれのお宅の飼育環境や各々の亀さんの個性に合った産卵法を見つけ出すための
ヒントにしていただければと願って、2匹のあかみみさん、吉ちゃんと福ちゃんのためにオリジナル産卵法を
考案し、産卵期を迎えた亀さん達と上手にお付き合いしていらっしゃる、しろくま様にそれぞれの亀さんへの
心遣い、思いやりがたっぷりと感じられる素敵なアイディアをご披露していただきました。
マンションのお部屋の中で産卵したり、あるいは加温飼育のため冬の間もお家の中で産卵を続ける
亀さん達はきっと多いと思います。そんなカメちゃん達を飼育中の飼い主さん達の参考になれば幸いです。

   まずは、今回素敵な産卵場をご披露してくれる可愛い2匹のカメさん達の紹介から。
   どちらも、しろくま様が1998年1月から飼育しておられる亀ちゃん達です。
     
 吉ちゃん
    本名は大吉です。
    マイペースだけどちょっと臆病。
    お願いごとがあるときは、住まいの
    水槽から飼い主を熱く見つめます。
    福ちゃん
        本名は大福です。
        とても人懐っこくてアピール度
        も旺盛。でも、飼い主の人指し指
        を見ると威嚇せずにはいられません。

吉ちゃんの産卵法
ここが吉ちゃん用のオリジナル産卵場。   
新聞と雑誌の束で作った穴です。
   この産卵場を上手に利用して産卵を
   する吉ちゃんの様子です。
         
吉ちゃんはいつもこの産卵場で、餌を食べなくなり暴れ始めてから1〜2週間ほどで卵を産む
そうです。以前は、お部屋に砂を入れた収納ボックスに置き、段差として雑誌を設置して産卵場
にしておられたそうですが、産卵場所を登ったり降りたりの繰り返しで、お部屋の中が砂だらけに
なるのが悩みの種。そんなある時、吉ちゃんが収納ボックスの砂にではなく収納ボックスと雑誌の
間に卵を産んでいるのを発見し、砂がなくても、何か溝状か穴状なっていればよいのでは、と
思いつき、試行錯誤を繰り返された結果考え出されたのがこの産卵方法なんだそうです。
穴をめがけて上手に掘るのは難しいため、後ろ足がなかなか穴の方に向かない時は後ろの方
の甲羅を持ち上げて穴のあたりに後ろ足を持っていくようなこともあるそうですが、触られるのは
あまり好きではない吉ちゃんも 10日以上経ってくると産卵したくて、吉ちゃんもそれでも良しとして
くれるそうです。

このとてもユニークな産卵場の作り方を写真とともに以下に詳しくご説明していただきました。
     写真@      写真A      写真B
   
新聞紙と雑誌の量を2対1の割合
にしてヒモで結びます。この時、
新聞紙だけでは軽すぎて、
掘っている最中に動いてしまい
雑誌だけでは重すぎて片付ける
時に大変です。厚みは
10〜12cmくらいが適当です。

写真@と同じものを4つ作り
真ん中に穴を作るように、
このように組み合わせて
並べます。




あからさまに真ん中に穴が開いて
いると穴の中を気にして覗き込み
産卵に集中しないこともあるため、
いらなくなったタオルなどを丸めて
穴に詰めておきます。このタオルは
掘る時に邪魔になることもある
ので、様子を見てそっと取ること
もあります

      写真C      写真D      写真E
 
いらなくなったシーツなどを
2枚用意してちょうどいい
大きさにたたみ、写真Cの
真ん中を中心に左右に2枚
並べて乗せます。これは、
新聞と雑誌の厚みを増し、
適度な柔らかさを出すためです。


新聞紙二枚の真ん中に穴を開
け上からかぶせて、動かないよう
四つ角をテープで止めます。
穴の開いた新聞紙をかぶせる
のは、新聞紙や雑誌やダンボール
の上を掘る行動をとることが
多いためです。おそらく臭いが
産卵行動を促すのではない
でしょうか。
写真Dの両脇にいらなくなった
バスマットやバスタオルなど
を置き、床との段差をカバー
して登り降りしやすいように
します。





産卵終了後の穴の埋め戻し作業は、その場では穴は埋まるはずがありませんので、 しばらく
(5分くらい)その場で埋め戻し作業をさせてから、いらなくなったバスタオルなどをひいた床に
下ろします。すると、その上で引き続き埋め戻し作業をしています。 納得がいくまで、なるべく
そのままそっとしておきます。だいたい1時間半ほどで埋め戻し作業は終了し、納得すれば自分の
水槽の方に戻ってゆきます。

福ちゃんの産卵方法
  福ちゃんのためのオリジナル産卵場で
  産卵している福ちゃん
  じつは、福ちゃんは小さい頃の病気のため、
  後ろ足が不自由な亀さんです。
  上手に砂が掘れないそんな福ちゃんのために
  飼い主さんが考えてあげたのがこの方法で、
  福ちゃんはこの産卵場を使って毎年順調に
  産卵してくれているそうです。
作り方は、まず砂が入った容器にビンを埋め、その容器を福ちゃんがじゅうたんなどを一生懸命に
掘っている間に福ちゃんの隣に設置。そしてその容器の上に夢中で掘って
いる福ちゃんを乗せるそう
です。最初は穴掘り作業を一瞬止めて様子を伺いながら疑わしそうな様子でビンの中を掘り始める
福ちゃんも、やがてまた掘ることに夢中になって、そのまま比較的すんなりと産んでくれるそうです。
餌を食べなくなって暴れ初めてから、だいたい3〜4日で産卵することが多いそうです

産卵後の埋め戻し作業の様子は福ちゃんも上記の吉ちゃんとほぼ変わりはないそうですが福ちゃん
の場合、砂だらけになってしまうためバスタオルの上にさらにレジャーシートを加えるそうです。



吉ちゃん福ちゃんともに、お互い相手の方法では産卵してくれないそうで、それぞれここにご紹介した
方法で2006年の夏、吉ちゃんは5回の産卵で合計44個、福ちゃんは6回の産卵で51個もの卵を
産んだそうです。吉ちゃん、福ちゃん、ほんとうによくがんばったね!
そして、2匹の亀ちゃん達への優しさが溢れる素敵なアイディアをご披露してくださった飼い主さんの
しろくま様、どうもありがとうございました!

2007年夏・しろくま様の改良アイディア                  (2007年8月10日追加掲載)

2007年夏、しろくまさんは吉ちゃん福ちゃんの産卵方法をそれぞれ試行錯誤の末、さらに改良なさった
そうですので、今年もご紹介させていただくことにしました。

まずは吉ちゃんの産卵方法。
上の写真Bで穴に詰めたタオルを、取り除く際に気分を害されるのか、吉ちゃんが穴掘りを中断
してしまうことも多かったため今年はタオルの代わりに、新聞紙を細かくちぎったものを下の写真の
ように埋めてみられたそうです。
  すると自分で掘る感覚が感じられるのがよいのか、
  スムーズに産卵してくれるようになったそうです。
  亀さんの気持ちになってみれば、掘る場所の条件
  として堀ごたえがじゅうぶん感じられる
  ということもすごく大切なことなのかもしれませんね。

続いて福ちゃんの産卵方法。
福ちゃんは後ろ足が不自由なカメさん。そのためお家の中を歩く時に甲羅の脇がフローリングにぶつかり
徘徊されるとコツコツととてもうるさかったそうです。そこで、騒音防止のため写真のように甲羅にハンカチを
巻いてみたところ、なんと騒音が激減しただけではなく、福ちゃんの鈍くなっている下半身の感覚をハンカチで
圧迫して産卵活動を活発にするのに役立ったのか、福ちゃんの産卵もスムーズなるという嬉しいオマケも
ついたそうですよ。なかなか掘ろうとしないときや、掘っていてもすぐに気を散らすとき、ハンカチを巻くと
すぐにすんなりと産卵してくれるそうです。
  甲羅にハンカチを巻いた福ちゃんの
  姿はすごくファッショナブル。
  実用性ばかりでなく、見た目もとても
  可愛いですね。
騒音防止のためのアイディアのつもりが、足の不自由な福ちゃんへの思いやりたっぷりの優しいアイディア
にもなったなんて・・・なんて素敵でしょう。
いずれも
カメさんの気持ちを第一に考えた、吉福ちゃんへの思いやりあふれる優しいアイディアです。

2007年夏、吉ちゃんは5回(計40個)、福ちゃんは7回(計47個)の産卵を7月の末に終え、
この夏の産卵を無事終えたそうです。今年はなんと産卵回数で最高を記録したんだそうですよ。

  臆病者でなかなかアップのお写真は撮らせて
  くれないという吉ちゃんが見せてくれた
  とっても可愛い寝顔。
  産卵後疲れてぐったりと無防備に眠る
  吉ちゃんです。
  すごくがんばったから疲れてしまったのね。
吉ちゃん、福ちゃん、ほんとうにお疲れ様。今年も大変よくがんばりました。


以下は、その後の2009年に吉ちゃん&福ちゃんから届いた産卵だよりです。 (2009年6月17日追加掲載)

今年も吉&福ちゃんから産卵のお便りが届きました。
福ちゃんは3月の終わりごろから、吉ちゃんは4月のはじめ頃から、それぞれに産卵活動を始め、おなじみの新聞の束を
使った方法で、6月15日現在、今年すでに4回もの産卵を済ませたという吉ちゃんと福ちゃんです

まずは、吉ちゃんと福ちゃん達の産卵活動開始の兆しについて

ほぼ毎日甲羅干しをして、よく食べるという
福ちゃん。ご覧のお写真はそんな福ちゃんの
日光浴風景です

福ちゃんは産卵行動が近づくと水槽の中で
お水を循環させているポンプにゴリゴリと甲羅を
擦り出すそうです。

一方、吉ちゃんは、ひたすらおとなしく
なって寝るようになるそうで、しろくま様の
お宅では、この状態を「嵐の前」と呼んで
おられるそうです。

福ちゃんの産卵場の改良
前回ご紹介しました砂とビンを使った福ちゃんの産卵場では、産卵場に戻した福ちゃんが穴をめがけて掘り始めるまでに
どうしてもビンの淵に後ろ足が引っかかって砂が飛んでしまうのがお悩みだったというしろくま様。

そこで、、、まず、穴を開けたダンボールを上に乗せてみましたが、失敗!次にその穴にビンを設置してみたところ、
1時間ほど掘ってくれたもののビンの穴がいつもより小さいのが気に入らなかった様子で、これでもやはり産卵はせず。
そこで、ビンをいつも使っているものに変えて設置すると、ようやくいつものように掘り始めて産卵してくれたそうです。
下の写真はその様子です。足の根元でビンの淵をなぞるような仕草で穴を掘る福ちゃんには、いつものビンが
ちょうど掘っているような気持ちになれてれてよいのでしょう。(右の写真は同じ箱を横から見たところです。)
卵を産んでいる最中に福ちゃんが箱から落ちてしまうこともあるそうですが、その都度すぐに箱の上へ戻してあげる
そうです。産卵用に甲羅に巻いたハンカチがいつも可愛いですね♪



こちらは産卵後に上の写真の箱から取り出した
福ちゃんご愛用のビンです。
たまごが入ったビンはマシュマロが入った
ビンみたいで、何ともいえず可愛いですね。

このビンの深さと口が広さ。いかにも実際に
土に掘る穴のサイズっぽくて、
福ちゃんがお気に召してくれるのも
わかる気がします。


吉ちゃんの産卵場は穴の大きさを改良

前回ご紹介した吉ちゃんの産卵場に乗せる新聞紙の穴を、以前のような大きな穴ではなく、自分で破る感覚を味わえる
ように、下の左の写真のように小さくしてみたそうです。右は改良した産卵場で、穴を掘って産卵を済ませ、産卵後の
埋め戻しをしている吉ちゃんの様子です。新聞紙なのに、しっかりと埋め戻しをするのには感動しますね。


産卵を刺激する匂いを利用するアイディア
カメさんの産卵をご経験された方はご存知かと思いますが、産卵場所を探し回るとき、床や地面に鼻をつけて
クンクンしていることがありますよね。
吉ちゃんの場合、産卵期が近づくと、興味を持って反応を示すものが特にハッキリしているそうで
新聞紙、麻紐で編んだ籠バッグ、アイロンを入れるダンボール箱、などにも興味を示すようになるそうです。
(ただし、新聞紙は一晩開いたままにしておいたものは匂いが飛んでいるのか反応しないそうです。)
この吉ちゃんの習性をヒントに、今回しろくま様から畳に反応を示すカメちゃん達のために
「安いゴザなどを使って試してみたらいかがでしょう。」とのアイディアもご提供いただきました。
多くの亀さん同様うちのかめみも畳は好きなのですが、私はこの理由を「家の中にあるものの中で比較的
柔らかくて掘りやすく、土の感触に近いからではないだろうか。」と予想していました。しかし、感触だけでは
なく匂いも関係していたのかもしれません。新聞紙、麻紐で編んだ籠バッグ、ダンボール箱、そして畳・・・
何か共通点がある気がしませんか?

お部屋の中だけで土を使うことなく上手に産卵させていらっしゃるしろくまさんの方法は理想的で
すごく魅力的ではありますが、ただ、この方法が成功するかしないかはケースバイケース。
カメさんも経験を積み一度自分なりの産卵の方法(例えば土を掘って、水槽の水の中で、床の上で・・・など)
が確立し、それが習慣になると、新しい方法に変えるのはなかなか困難です。
どのような方法にしろ、新しい方法を身につけさせるには、早いうちに覚えさせることが成功の決め手となるの
かもしれません。

鋭い観察力で各々のカメちゃん達の気持ちや個性をデリケートに見極め、試行錯誤を重ねていらっしゃる
しろくま様の探究心と努力にはいつも頭が下がる想いです。今年も貴重な情報を提供してくださりありがとう
ございました。
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